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フィンランド・スウェーデンのNATO加盟とバチカンを守るスイス傭兵
2023年4月にフィンランド、そして2024年3月7日にスウェーデンが北大西洋条約機構 (NATO; North Atlantic Treaty Organization) に加盟した。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化を睨んだ両国の動きは、自国と自国民を守るために不可欠な措置といえる。事実、2022年3月以降、フィンランドとスウェーデンでは、ロシア軍戦闘機による領空侵犯が相次いだ。中でも、核爆弾を搭載したスホイ24爆撃機2機が、スホイ27戦闘機と編隊を組み、4機でスウェーデン上空を侵犯した国際法違反は、中立国であるフィンランドやスウェーデンのみでなく、北欧圏全体の安全基盤が揺らぐ大事件であった。
フィンランドは今回のNATOの加盟により、1948年から75年間守り続けてきた、如何なる他国の脅威にも抗しないフィンランド化政策の幕を閉じた。またスウェーデンに至っては、ナポレオン戦争後の1843年から180年間貫いた中立主義政策 (Neutralism) から止む無く手を引くこととなった。
北欧の二大中立国が立場を異にした現在、残る近隣の中立国はスイスであるが、スイスは自国の軍隊を持つ武装中立国である。一方、非武装の中立を宣言する国家は、現在のところ中央アメリカのコスタリカとバチカン市国のみとなる。しかし実のところ、コスタリカは常備軍が無いだけで非常事態に徴兵制が敷かれるため、地球上で一切の軍備を持たない本当の中立国は、国土面積0.4平方Km、住民人口800人、世界最小の国家であるバチカン市国 だけとなった。
バチカン市国は1929年のラテラノ条約により、対外的に永世中立を宣言している。唯一国境を接するローマとの境にレンガ創りの要塞はあるが、観光客を含めて誰もが関門を行き来できる。小生の話になるが、この偉大な小国に位置する世界最先端の医療を誇るバンビーノ・ジェズ小児病院に度々訪れる機会があった。一日の業務が終わると決まって歩く散歩コースがあるが、軍隊のないバチカン市国では、治安維持のため中立国であるスイス軍から派遣された傭兵に出くわす。選りすぐりのエリート軍人の彼らは、数か月から1年の任務を交代しながらバチカンの警備を担う。写真はオベリスクがあるサン・ピエトロ広場を出て右手にあるサンティ・ミケーレ・エ・マーニョ教会であるが、小生は毎日、教会の警備をしていたスイス軍人 (小生も予備自衛官であり、偶然にも名前が同じgeorgeであった) との会話がルーティンになっていた。彼はスイスから派遣されバチカンの傭兵に就くにあたり、自分が中立国スイスの軍人であることを、いつも誇らしげに私に語っていたことを思い出す。
しかしながら複数の情報によると、ここにきて1815年のウィーン協定以降、200年以上も中立を堅持するスイスまでもが、NATOとの緊密な関係を築きつつあるという。プーチン・ロシアを牽制してフィンランドとスウェーデンがNATO加盟に転換した史実もさることながら、時すでにローマ・カトリックの総本山であるバチカン市国の治安を中立的立場から支えるスイス軍傭兵の誇りやアイデンティティまで傾かざるを得ない情勢に陥っている。案ずるに、国際関係のパワーバランスが破綻する日を予感してしうまのは、もはや心配性の小生だけではないだろう。
【参考URL】
ロシア軍の戦闘機がスウェーデン領空を侵犯 https://www.cnn.co.jp/world/35184377.html (CNN 2022/03/03)
ロシア、フィンランドの領空侵犯 https://www.afpbb.com/articles/-/3403336 (AFP BB news 2022/05/05)
https://www.admin.ch/gov/en/start/documentation/media-releases.msg-id-99900.html
Federal council approves report on strengthening the defense capability of the Armed Forces and depending international cooperation https://www.admin.ch/gov/en/start/documentation/media-releases.msg-id-99900.html
(Swiss council The portal of the Swiss government 2023/01/31)
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