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ブログ (社会課題)2022.09.11

日本は3つの核保有国に包囲されているー尖閣諸島の領有権

 ちょうど10年前の2012年9月11日、日本政府は魚釣島、北小島、南小島等からなる沖縄県尖閣諸島を、さいたま市在住の個人地権者から20億5千万円で購入し、国有地として転移登記した。当時、世界が天然資源価値を求めたレアメタルや良質の石油や化石燃料がこの海域に豊富に埋もれていることが分かり、2008年末以降、たびたび中国の海洋船が周辺領海に侵入し調査を進めていた。この海域は漁場としても優れ、2010年には中国船との衝突事件も起き緊張が高まっていた。さらに海政学的に海上基地として砦となる島であり、日本、中国、台湾政府が3方向から領有権を主張していた矢先の日本政府の国有化宣言である。政府はこの島を国際法的手順で先占したとはいえ、韓国が実効支配している島根県竹島と同様、尖閣はその後長きに東アジア地域に禍根を残している。


 元々、尖閣諸島の国有化は、東京都知事(当時)の石原慎太郎氏が購入計画を表明し都有化を構想したことに始まる。最終的に都と国の交渉により国が購入した方が中国と折り合いがつくとの見立てに至るが、結果的に日中関係の緊張を一気に高め悪化させたことは事実である。個人の意見であるが、日本の排他的水域内でミサイル発射実験を繰り返し、ついにアメリカ本土を狙える大陸間弾道ミサイルを開発した北朝鮮、2022年2月以降残虐な行為を続けているソ連のウクライナ侵攻、そしてこの10年で世界経済と軍事バランスの系図を塗り替えた中国の台頭を俯瞰すると、10年前に東京都が尖閣諸島購入を表明し、強く中国を牽制していなければ、その後10年で平和慣れした日本はさらに危機管理能力を失い、オリンピック開催どころか、自国の領海、果ては領土を守り切れていなかったとさえ思えてしまう。


 当時の尖閣諸島はレアメタルや石油など天然資源の目的もあった。しかし現在の目的は異なる。1997年に英国から返還された香港は、2047年まで特別行政区として一国二制度を維持する約束であった。しかし2019年の雨傘運動後、2020年6月末に国家安全維持法のもと一国二制度は消滅した。次に中国習近平が一国二制度として狙うは台湾である。もし台湾有事が起きたら日本はどうなるのか。ロシアがウクライナに侵攻した際、当初国境線沿いに戦車の大群を並べた光景は記憶に新しい。ロシアとウクライナは陸続きであり、その後ウクライナを自国の領土と主張したロシアが一気にウクライナ側に侵攻した。さて、中国が台湾本土に攻め入るには、領海か領空を侵犯する必要がある。海上保安庁の統計によると、尖閣諸島周辺海域に侵入した中国海警局に所属する船舶の隻数は、先月8月だけでも18隻、接続水域内への侵入は121隻に上る。中国政府は自国の魚釣島の警備という主張の元にこの海域の侵入を繰り返し、国際世論の既成事実化を図る狙いがある。中国が断行するこの海洋の構図は、ロシアがウクライナ国境沿いに並べた戦車と二重視される絵柄であり、国家間のバランスとして非常に危険な兆候である。こう考えると誰の眼にも中国軍の思惑は見えてくる。海上保安庁が月100隻以上の船とイタチごっこをしている魚釣島を中国が占領し、尖閣の島々を起点に台湾へ攻撃を仕掛けるシナリオである。つまり台湾有事に際し、中国が最初に侵犯する可能性が高い場所は尖閣諸島、要するに日本の領土であるという戦略を、国民はより強い危機感をもって認識すべきではないだろうか。


 北ではロシアがウクライナと北方領土に、日本海を挟んでは北朝鮮と韓国が、そして南方では中国と台湾が右方左方に睨み合っている。その間に位置する日本は北朝鮮、ロシア、中国という3つの核保有国に囲まれ、常に核の脅威にさらされている。今の世界の常識では、対峙する力と力のパワーバランスなしには国家間の平和など維持できない。そうした状況で、現在の日本の平和と安全が維持されている伏線を遡るに、10年前に突如日本政府が尖閣を購入して中国政府を強気で牽制した外交戦略が、今でも功を奏していると思えてならない。




【参考URL】

海上保安庁HP.尖閣諸島周辺海域における中国海警局に所属する船舶等の動向と我が国の対処. https://www.kaiho.mlit.go.jp/mission/senkaku/senkaku.html

衆議院HP.小野寺五典.東京都知事の東京都が尖閣諸島を購入する旨の発言に対する政府の見解等に関する質問主意書 .(平成二十四年五月一日提出 質問第二ニ二号)  https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a180222.htm

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