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嘘で固められた世界で私たちは偽りの平和を頼りに生きている
2020年1月、中国湖北省の武漢から全世界に広がった新型コロナウイルスの流行は、その後1年半を経た今でも新型デルタ株ウイルスの変異も相まり勢いに陰りは無い。世界中がコロナウイルスと人類の戦いに追われる中、1年延期されたとはいえ開幕まで残り約3週間となった開催国である日本では、競技ごとにオリンピック出場選手が決定し、俄かに開催ムードが高まってきた。そんな最中、感染症専門家の観点から開催に慎重論を示す発言をした政府新型コロナウイルス感染症対策分化会の尾身茂会長を「自主的な研究成果の発表だと受け止める」と揶揄した田村厚労大臣や、「言葉の過ぎた越権行為」だと上から目線で扱った某自民党幹部、果ては世の飲食店に酒類提供を厳しく課してきたにも関わらず「競技会場で観客への酒類販売を認める…」等の議論に予算を費やしている橋本聖子会長率いる五輪組織委員会の的外れさに、呆れを通り越して憤りを感じた市民は少なくない。政府は未だに五輪を国威発揚の場とでもしたいのだろうか。
しかし世間がオリンピックやコロナワクチンのニュースに踊らされる中、平時であれば日本社会を揺るがす大問題である経済産業省の東芝に対する改正外為法問題や、財務省の森友学園決裁文書改ざんの件で自殺に追い込まれた赤木ファイルなど、政府が蓋をしたい闇の問題が五輪の陰で国民に深く議論されることもなく流されている事実に我々は目を光らせなければならない。とりわけ私が最も衝撃を受けたニュースは、昨年6月に約6,000億円かかるゆえに断念されていた陸上配備型迎撃ミサイルシステムのイージス・アショアに代えて、突如として先月5月21日に防衛省に配備が決定した総経費1兆円を超えるイージスシステム搭載艦2隻である。東京五輪の総費用が1兆8,000億円と聞けば国を守るためとはいえ如何に巨額の装備であるか理解されるだろう。更には2021年1月に米国ではバイデン政権が誕生したが、このシステムの購入元が米国ロッキード社製であることを知るとなるほど頷けてしまう。
さて問題はその性能であるが、もしも北の隣国から核弾頭ミサイルが発射された場合、日本本土に核が着弾するまでに要する時間は僅か8分間しかない。この固唾を飲みこむ分数の間で、空中に対飛する対空ミサイルを迎撃し爆破させる移動型のハイテクシステムである。東アジア情勢を鑑みると、国民の命を守るためには必須となる要の防衛策だが、私たちがこうして平和な生活を過ごせるのも、韓国、台湾海峡、フィリピンそしてカリマンタン、ベトナムと続く中間線の両岸で、最新鋭の軍事機器による水際の配備戦が繰り広げれらているからに他ならない。
もしかしたら今私たちが感じている平和は、巨額の資金を投入して繰り広げられている装備戦の狭間にある偽りの平和かもしれない。しかしこの世の中が偽りで固められた世界だとしても、私たちはその偽りを信じて生きていくことに平和を感じているのである。
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