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何かと地球温暖化を原因とする風潮
昨年に引き続いて今年も9月23日の立秋を過ぎても、昼間の最高気温が30度を超える真夏日や、夜間気温が25度以上の熱帯夜が続いている。気象庁発表の向こう一か月の予報でも、今年の10月は例年以上の高い気温が予想されている。実際、1980年代以降の昭和と2020年代令和の真夏日を比較すると、東京の真夏日は約50日も伸びている。確かに昭和の夏といえば7~8月の夏休みの時期が思い返される。8月の後半には残暑見舞いを投函し、9月に入ると子どもながらに金木犀の香りに秋の気配を感じていた。つまりこの四半世紀で、東京の夏季は亜熱帯さながら6月~9月へと拡大したのだ。
2015年9月、国連地球サミットの場で持続可能な17の開発目標(SDGs)が採択され、各国政府は気候対策アジェンダを公表した。以降、世界的に環境問題や社会問題に対する関心、とりわけ地球温暖化問題に対する啓発と危険性が広く認識されている。しかしこのSDGsの影響もあってか「夏の東京の気温上昇は、地球温暖化が原因である」と短絡的に報道されるメディアや世論のパターナリズムに我々は注意を払わなけばならない。風が吹けば桶屋が儲かると迄は言わぬも、確かに東京の夏の平均気温上昇の一因は地球温暖化にある。しかし夏場の大都市の気温上昇の主因は「ヒートアイランド現象」である。ヒートアイランド現象により夏場の熱中症は田舎より外気温の高い都市部で多発し、暖冬はインフルエンザなどウイルスが生存しやすい環境温床と化す。
はたまた夏場の異常気象として、帯状に連なった積乱雲が線状降水帯となり齎される集中豪雨や水害も、地球温暖化現象と被ってマスコミ報道されている傾向がある。しかし2014年6月の宮城県川南町の平田川、2015年9月の茨城県常総市の鬼怒川の氾濫は、双方集中豪雨の影響も加味されるが、河川敷に設置された巨大な太陽光パネル工事の影響が過分にあると調査された。防波堤周辺の林野を開拓したことで地盤が緩んだ事実は共に否めない。全国の河川敷で太陽光パネルを眼にする発端は、2010年に国土交通省が国有地である河川敷に太陽光発電を再生可能エネルギーとして民間に委託した事業計画にある。類似した事業計画で山谷の斜面を切り開き一面に設置された太陽光パネルも各地で目にするが、2018年にはパネルが台風や土砂崩れで損傷した事故が全国で57件も報告されている。以後、日本各地でメガソーラー裁判が行われているが、今年7月10日に土石流が襲った静岡県熱海市伊豆地区にしても、上流で施工された太陽光パネル工事に伴う盛り土との因果が調査されている。一連の災害を考えると、一体原因の何処までが地球温暖化にあり、何処からが科学的調査や行政政策の甘さによる人災であるかが争点であると理解される。
さらに関係の無いところまで温暖化と結び付いてイメージされる事柄に、9月1日の「防災の日」や9月初旬の「秋の防災週間」がある。近年、夏休みが終わる9月以降も暑さが続くようになり、台風の到来と共に水害に備える必要があるイメージが先行している。しかし事実として、CO2の排出量が増えたとしても日本に上陸する台風の数には何ら関係がない。そもそも防災の日が設定されたのは1960年のことで、この暦は1923年9月1日に発生した関東大震災に因んでいる。
海外メディアでも様々な異常現象を地球温暖化と二重視して報道している事例がある。2019年にケニア・エチオピア、2020年にはソマリア・ロシア・インド・マダガスカル・アルゼンチンなど世界20カ国以上、そして2021年夏にアメリカ西部でバッタの大発生が起きている。またアメリカ東部ではセミの大発生も起きている。ソマリアで観察されたサバクトビバッタの事例では、広大な地域で草木や森林、そして農作物が億単位のバッタの群衆に食い荒らされ、二次的に人と家畜を巻き込む大飢饉が発生している。バッタが幾日もの期間に渡り大量発生し、過ぎ去った地域で一つ残らず緑が枯渇してしまう現象は「飛煌」と呼ばれ、飛煌による厄害は「煌害」と称される。飛煌は古代中国・漢の時代に大発生したトノサマバッタの伝説や、朝鮮古典の『三国史記』にも記録されている生物の自然現象であり、温暖化が叫ばれる以前、遥か太古の昔から知られた史実である。勿論、武漢のコロナウイルス発生説と温暖化現象の間で、互いの因果にまつわるエビデンスなど存在しない。
国連機関がSDGsに掲げる地球規模の環境問題や社会問題に対する実行可能なアプローチは、常に最先端の科学的な裏打ちが必要である。今日、世界中のマス・メディアが地球温暖化現象と結び付けて何かと事象を短絡的に報じている風潮があり、対峙する我々は常々批判的な視点を保持しなければならない。
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