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My Opinion2021.10.10

頻回の総理交代は「ねじれ」と「党による拘束」のためだ

 戦後、日本の総理大臣は幾度か連立政権体制が採られてはきたが、基本的に与党自民党の総裁である。理屈上一つの党の力が強ければ、「与党と総理と内閣」の3つの連携を構築しやすいため長期の政権運営が可能となる。しかし矛盾する様であるが、実際のところ日本の総理大臣の交代頻度は諸外国より頻回であり、同時に首相在任期間も短命である。


 日本の総理大臣の任期が短い要因として、国会議員の対等な二院制が指摘されている。日本では憲法4章59条で衆議院の優越が定められている。一度参議院が否決した法律案について再議決をする際、衆議院では3分の2以上の多数を確保することではじめて再決議が可能となるシステムであり、そのハードルの高さから参議院は優越した院とされている。実際、3年ごとの参議院通常選挙がいわば中間選挙的に内閣の進退に影響することがあり、1998年の参議院選挙の敗北により橋本龍太郎氏は総理を辞した。また退陣しない場合であっても、衆議院と参議院の多数派が異なる所謂「ねじれ」の状況が生じた場合、その政権の運営は不安定化してしまい首相の指導力が弱まるとされる。近年、ねじれ状態の下で安倍晋三氏、福田康夫氏、菅直人氏の3人が首相の職を辞している。また前述の法律案に加えて、予算の執行を担保する財源法案については衆議院の優越規定がないため、予算は衆議院の単独議決によって成立されたとしても、その執行が参議院の反対によってブロックされてしまう。政府活動の主要な事柄は予算案の執行を通じて始めてなされるが、およそ40兆円の赤字国債の発行がなければ年度後半の予算執行は不可能となり、それをクリアするためには特例公債法という法律を成立させなければならない。菅直人首相の辞任は、実質的にこのハードルを越えられなかったからだと言われている。つまり二院制議会における参議院の強さが総理大臣の任期に影響する選挙回数の増加につながり、結果的に首相退陣のペースが連動して速くなるのだ。

 しかし強力な参議院によるねじれ状態だけでは政権交代を説明できない状況もある。事実、森喜朗氏や小泉純一郎氏の退陣時には、ねじれ状態は生じてい。別に考えられる日本独自の要因として「政権党による首相の拘束」がある。要するに首相の力もさることながら、政権党の権限もかなり強い。例えば自民党は総裁任期を3年としているが、任期が来れば首相在任中であっても総裁選が行われている。つまり総裁が首相となり、総裁選挙で負ければ首相職を辞するシステムがある。今回の菅義偉元総理大臣も任期途中であったが総裁選に再度立候補しない形で退任となった。また任期中に総裁が欠けた場合、新たに選任された総裁の任期は前任者の残任期間と党則第84条2で規定されている。また引き続き二期を超えて在任することはできない文言が総裁公選規定第10条に規定されるなど、現行の制度は党首に対する拘束力がきわめて強い。そのため前任者の任期途中から総理大臣になった人は、前任者の任期内でしか総裁、総理大臣になれないため在任期間が短くなる。

 つまり日本で首相が頻回に代わり任期が短いのは、衆参二院制議会による「ねじれ」と「政権党による首相の拘束」があるからだ。

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