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99日後に迫った2022北京冬季五輪とIOC
紆余曲折、新型コロナウイルスの世界的な流行もあり、五輪史上初めての延期開催となった2020東京五輪であったが、その甲斐あって2021年9月5日に幕を閉じた。菅氏から岸田氏に首相も変わり、ようやく国内の世情が五輪後の新しい日常を模索し始めた昨今、再びここにきて国際オリンピック委員会(IOC)の最高責任者であるトーマス・バッハ会長のメディア露出が高まっている。言わずもがなその理由は、99日後に迫った2022年2月4日からお隣中国で開催される「2022北京冬季五輪」のためのロビー活動である。しかし商業的失敗が許されない立場にあるバッハ会長が焦る理由は、けして1年遅れた東京五輪の煽りで北京五輪のプロモーション時間が十分に割けなかったためだけではない。
2014年9月に勃発した香港反政府市民デモである「雨傘革命」を鎮圧するため、中国政府は2015年7月に「中華人民共和国国家安全法」を新たに制定した。その後中国軍はこの法の名のもとに香港市民の弾圧を行い、武力により香港政府を打ち倒している。2017年に国家組織的に行われた「新疆 ウイグル自治区」における大量投獄については、その詳細を国際人権団体であるアムネスティー・インターナショナルが緊急報告書に暴いている。この問題は米国ポンペオ国務長官により国家的ジェノサイドと断定され、以後バイデン政権のみならず世界中の厳しい眼が監視を強めている。2019年にはスローガン「一つの中国」が声高に謳われ、渡航を禁止したとともに南シナ海両岸で軍事的圧力を急激に強めている渦中の「台湾問題」。そして2020年1月に湖北省武漢で確認された初期のパンデミックを中国政府が世界保健機構(WHO)に隠蔽したが故に、その後瞬く間に全世界へ拡大してしまった「新型コロナウイルス問題」など、この幾年かで立て続けに起きている中国政府に纏わる数々の国際的な問題も相まって、スポンサーとなる大企業や各国の有識者を中心に、名ばかりの平和の祭典になりつつある北京五輪に対するボイコット運動が日に日に高まりつつあるからだ。
北京五輪の成功に全てをかける中国政府が抱える課題は国外だけではない。国内需要についても中国最大手の不動産グループである恒大集団(エバーグランデ)の経営破綻、所謂チャイナ・ショックに対する懸念から、世界第2位を誇り6期連続で右上がりの経済成長を遂げていたGDP(国内総生産)がここにきて初めて鈍化に転じたのだ。
これら中国内外の人権、経済、領土問題から人民の眼を逸らさせ、同時に自らの地位をより強固にしたい習近平国家主席の胸中が穏やかであるはずはない。2021年7月に北京天安門広場で盛大に催された「中国共産党創建祝賀100周年大会」で習国家主席が掲げた次なる目標は、偉大なる中国共産党の新しい100年に向けた初めの一歩となる2022北京冬季五輪の成功である。
つまり武漢の汚名を返上すべく徹底したゼロコロナとノーマスクの観客で埋め尽くされた競技場を世界各国に衛生中継し、この機にさらなる国家の発展を誇示したい中国政府の思惑は、商業的盛況とともに4年毎に行われる次期IOC会長選挙で再選を果たしたいバッハ会長の戦略や利害関係と完全に一致しているのである。
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