ブログ

ブログ (社会課題)2022.12.13

ロシアとウクライナの攻撃が停滞する冬の間に、国際社会は両国が停戦合意するための新たな枠組みを構築する必要がある

 ウクライナ対ロシアの戦いが長引きつつある。この件については、9月22日のブログ『勝者のいない戦いーウクライナ対ロシアにみる現代戦争の終わらせ方』 https://imataka.labby.jp/blog/detail/1181 でも綴らせていただいた。一進一退の戦いはその後も続いている。そして戦況が長引くにつれて、両国の経済状況は急激に悪化している。

 この戦争はそもそもプーチンが始めた戦争であり、プーチン政権が早期に崩壊でもしない限り、戦いが終息する可能性は低い。2022年3月にはロシア軍がキーウ近郊のブチャに侵攻し、ウクライナの民間人400人以上に対する大虐殺が起きている。以降、ロシア軍による数々の拷問や虐殺の痕跡がウクライナ各地で確認された。再びロシア軍がウクライナ領土に侵攻した場合、大虐殺が繰り返される可能性は非常に高い。従ってロシア軍の戦争犯罪が国際司法的に未解決なままの状況で、言わば「祖国防衛戦争」を継続しているウクライナが戦いの手を引くには、相当リスクが高い戦況なのである。


 そこで考える策が「停戦合意」である。ロシアもウクライナも面目を保ちながら停戦に合意する術はないのか。しかしそもそも2014年のクリミア危機で、ロシア軍はクリミアやドンバス地方に一方的に侵攻してクリミア共和国を独立させ、ウクライナと停戦協定を交わしていた。にも関わらず、2月24日にプーチンはこの協定を難なく無視して侵略戦争を始めたのだ。この過去の経緯があり残念ながらウクライナはロシアを全く信用していない。そのためロシアがウクライナに停戦合意を持ちかけたとしても、ウクライナが承認することなど鼻から期待できない。

 ともすると停戦を持ち掛けたいのはむしろロシアである。プーチンとしては世界の眼を欺くことが出来るし、国内世論に向けて正義を主張する立場に立てる。しかしウクライナにとって停戦が長引くことは、プーチン政権に国内経済の立て直しのための時間を与えることに他ならない。ロシアは間違いなくその期間に武器を補充し、軍隊の強化を目論む。とすると現在、回復基調にあるウクライナ軍としては不要な停戦合意よりも、今のうちにロシア軍の力を出来る限り無力化しておきたい狙いがある。


 今まで防衛戦に徹していたウクライナであったが、翻りここにきてロシア国内のインフラや軍事基地を標的にドローンによる無人攻撃を開始した。一見ウクライナ優勢に見えるドローン攻撃であるが、今後もしロシアの民間人に被害が及びロシア国民の反感を煽ると引き戻れない事態にもなりかねない。もしそうなると好都合なのはプーチンだろう。自国民を守る正当防衛として生物兵器や核を行使する十分な理由になるからである。


 ウクライナ軍のドローン作戦やロシアのインフラ空爆など、最近の互いの攻撃は空からが多い。その背景には、冬場はマイナス20度を下回るステップやツンドラなどロシア・ウクライナ地域の気候の特殊性がある。ロシアはここに来て空爆によりウクライナ各地の電力施設を破壊し電力供給の遮断を目論んでいる。ウクライナにとって電力を絶たれることは、12月~2月の最も寒い時期に市民生活の暖が奪われることを意味している。ロシアが空からの攻撃を多用する理由は別にもある。冬場の極寒凍土を移動するに、ロシアの最新式戦車T-90Mは一台の重さが46トン以上もあり適さないからだ。互いに空から攻撃をしても、地上から侵攻し領土を占領しないことには、この戦いは勝敗がつかない。


 思えばこの戦争が始まったのは2月の末であった。つまり領土を狙う地上戦を展開するには冬明けを待たねばならず、ウクライナ優勢に見えるこの時期、ロシアは陣を一度引き戻して電力源やインフラ空爆に徹して武器を蓄えているに過ぎない。春を待つロシアは雪解けに一気に地上から戦車で再攻勢をかけるだろう。季節が変わり劣勢になる前に、もしウクライナがNATOに加盟できればEU多国に守ってもらうことが可能になる。ウクライナが喉からそれを望んでいることは容易に想像できる。しかし戦争中の国家はNATOに加盟することはできず、ウクライナは祖国防衛のために戦い続けるしか残された道は無いのだ。

 時は得難くして好機は失いやすい。講じるに国際社会はこのタイミングで両国の仲裁を図るべきである。逃した暁には、東ヨーロッパ諸国のみならず世界全体に禍根を残す「数十年戦争の引き金」にも成りかねない。12月13日、フランス政府が動きパリで電力が深刻なウクライナ支援策に対する国際会議が始まった。両国の攻撃が停滞する冬の間に一刻も早く、国際社会はこの戦いを停戦合意に持ち込むためにNATOとはまた別の新たな枠組みの構築を話し合う必要があるのではないだろうか。




【参考URL】

「ウクライナ国境のロシア軍、40%以上が攻撃態勢 米高官」 AFP通信 2022/02/19

https://www.afpbb.com/articles/-/3390891?pid=24212799

「ウクライナがドローン攻撃 ロシア空軍基地を標的」 産経新聞 2022/12/06

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR064VW0W2A201C2000000/

「電力不足深刻なウクライナの支援策議論 パリ会議で始まる」 NHK NewsWeb 2022/12/13

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221213/k10013922251000.html

最新ブログ